遺言書にもデメリットはある?作成前に知っておきたい注意点

遺言書には、

「自分の財産を誰に残したいのかを明確にできる」

「残された家族の相続手続きを進めやすくできる」

など、さまざまなメリットがあります。

一方で、遺言書を作っておけば、将来のことがすべて解決するわけではありません。

遺言には遺言ならではの特徴があり、それが場合によっては注意点になることもあります。

今回は、遺言書を作成する前に知っておきたい「遺言の短所・注意点」についてご説明します。

1.遺言書は後から書き直すことができる

遺言書は、一度作成したら変更できないものではありません。

遺言者は、生前であれば遺言を撤回することができます。

また、新しい遺言書を作成し、以前の遺言書と内容が抵触する場合には、その抵触する部分について前の遺言が撤回されたものとして扱われます。

これは遺言の大きなメリットでもあります。

たとえば、遺言書を作った後に、

  • 自宅を売却した
  • 預貯金が増減した
  • 家族関係が変わった
  • 相続させようと思っていた人が先に亡くなった
  • 自分の気持ちが変わった

といったことがあっても、現在の状況に合わせて遺言書を見直すことができます。

「一度書いたら変えられない」と考えなくてもよいことは、遺言書の良いところです。

書き直せることが問題になる場合もあります

一方で、高齢になり判断能力が低下してきたときなどには、

「後から作られた遺言書は、本当に本人の意思だったのだろうか」

と問題になることがあります。

たとえば、以前は子どもたちに均等に財産を残す遺言書だったのに、亡くなる直前になって、

「すべての財産を長男に相続させる」

という遺言書に変更されていた場合です。

他の相続人から、

「長男に言われて書き直したのではないか」

「その頃には遺言内容を理解できる状態ではなかったのではないか」

という疑問が出る可能性があります。

大切なのは、遺言者自身の自由な意思によって遺言書を作成していることです。

特に高齢になってから遺言内容を大きく変更する場合には、本人の意思や判断能力について後から疑問が生じないような準備も考えておくことが大切です。

2.自宅で保管する自筆証書遺言には紛失・破棄・改ざんなどの心配がある

自筆証書遺言は、自分で作成して自宅などに保管することができます。

手軽である一方、

「遺言書そのものが見つからない」

という問題が起こる可能性があります。

また、自宅で保管している場合には、紛失したり、第三者によって破棄・隠匿・改ざんされたりする危険性も否定できません。日本公証人連合会も、自宅保管の自筆証書遺言にはこうした保管上のリスクがあることを説明しています。

せっかく遺言書を作成しても、亡くなった後に家族がその存在を知らなければ、遺言内容を実現することができません。

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法もあります

現在は、自筆証書遺言を法務局に預ける**「自筆証書遺言書保管制度」**があります。

法務局で保管することで、遺言書の紛失や亡失、相続人などによる破棄・隠匿・改ざんを防ぐことができます。

また、法務局に保管された自筆証書遺言については、相続開始後の家庭裁判所による検認が不要です。

ただし、法務局の保管制度を利用したからといって、遺言書の内容そのものの有効性が保証されるわけではありません。

法務局も、保管制度は遺言内容について相談したり、遺言書の有効性を保証したりする制度ではないと案内しています。

公正証書遺言を利用する方法も含め、ご本人の状況に合った遺言方法を選ぶことが大切です。

3.相続人全員の合意により、遺言と異なる遺産分割が行われることもある

遺言書を作成したからといって、必ずすべてのケースで遺言書に書かれた内容どおりの財産分けが行われるとは限りません。

遺言の内容や遺言執行者、受遺者などの状況にもよりますが、相続人全員が合意して、遺言とは異なる内容で遺産分割を行うことができる場合があります。

そのため、

「遺言書を書いたから、自分が亡くなった後は絶対にこのとおりになる」

と考えるのではなく、遺言内容を実現しやすくする方法まで考えておくことが大切です。

たとえば、遺言執行者を指定しておくことも、その一つです。

家族が納得できる遺言書にすることも大切

遺言には法的な効力がありますが、相続は残された家族の間で行われます。

そのため、

「なぜ長男に自宅を残すのか」

「なぜ長女には預貯金を多く残すのか」

という理由が家族にまったく伝わらない遺言書では、相続開始後に不満が生じることがあります。

そのような場合には、遺言書の「付言事項」を利用して、ご本人の考えや家族への思いを書き残す方法もあります。

法的な効力とは別に、

「なぜこのような遺言にしたのか」

を家族に伝えておくことには意味があります。

4.遺言書は原則として死亡後に効力を生じるもの

遺言は、原則として遺言者が亡くなった後に効力を生じます。

そのため、

「自分が元気な間の財産管理」

や、

「判断能力が低下した後に誰に財産管理をしてもらうか」

といった生前の問題を、遺言書だけで解決することはできません。

たとえば、

「認知症になった後の財産管理が心配」

「施設に入った後、自宅をどう管理するのか」

といった問題については、遺言とは別の制度や準備について考える必要があります。

遺言はとても重要な相続対策ですが、遺言だけですべての終活を行うことができるわけではありません。

生前贈与にも注意が必要です

生前に財産を渡しておきたい場合には、生前贈与という方法もあります。

しかし、

「子どもたちに早く財産を渡しておこう」

と考えて財産を渡しすぎてしまうと、その後のご自身の生活資金が不足する可能性があります。

長く生きることを前提に、

自分自身の生活に必要な財産はきちんと残しておく

という視点も非常に大切です。

相続対策は、「できるだけ早く財産を渡せばよい」というものではありません。

まずはご本人の生活を守ることを第一に考える必要があります。

遺言書は「作ったら終わり」ではありません

遺言書を作成した後にも、

  • 財産が変わった
  • 不動産を売却した
  • 家族関係が変わった
  • 相続させたい人が変わった
  • 相続させる予定だった人が先に亡くなった

ということがあります。

そのため、一度遺言書を作成した後も、ときどき内容を確認することをおすすめします。

必要がなければ、そのままで構いません。

状況が変わっていれば、その時点で遺言書を見直せばよいのです。

遺言のメリットと注意点を知ったうえで準備しましょう

遺言書は、ご本人の希望を相続に反映させるためのとても大切な方法です。

しかし、

「遺言書さえ作っておけば安心」

というものでもありません。

大切なのは、

誰に何を残したいのか
なぜその人に残したいのか
遺言書をどのように保管するのか
亡くなった後に誰が手続きをするのか
生前の財産管理についても準備が必要なのか

というところまで考えることです。

ハートフルサポート行政書士事務所では、ご本人のご希望だけでなく、ご家族や財産の状況を確認しながら、どのような遺言書にするのがよいのか一緒に整理いたします。

「遺言書を作った方がよいのか分からない」

「自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらがよいのか迷っている」

「以前作った遺言書を見直したい」

そのような段階からでも、お気軽にご相談ください。

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