寄与分とは?介護や家業への貢献は相続で考慮される?
「親の介護を長年してきた」
「家業を無給に近い状態でずっと手伝ってきた」
「親の借金を代わりに返済した」
相続が始まったとき、このような事情がある相続人から、
「他の兄弟とまったく同じ相続分になるのでしょうか?」
という疑問が出ることがあります。
相続では、一定の場合に、このような特別な貢献を相続分に反映させるための**「寄与分」**という制度があります。
今回は、寄与分とはどのような制度なのか、どのような場合に認められる可能性があるのかをご説明します。
寄与分とは?
寄与分とは、共同相続人の中に、
被相続人の財産の維持または増加について特別な貢献をした人がいる場合、その貢献を遺産分割に反映させる制度
です。
民法では、たとえば、
- 被相続人の事業について労務を提供した
- 被相続人に財産を提供した
- 被相続人の療養看護を行った
などによって、被相続人の財産の維持または増加について「特別の寄与」をした共同相続人について、寄与分を考慮することが定められています。
たとえば、夫婦で家業を大きくした場合
たとえば、夫が小さなパン屋を始めたとします。
妻も開業当初から一緒に働き、
- 毎日店頭に立った
- 経理を担当した
- 製造を手伝った
- ほとんど給与を受け取らなかった
という状態で、夫婦二人で長年事業を続けました。
その結果、小さかったパン屋が大きな事業になったとします。
事業用の財産が夫名義であれば、夫が亡くなったときには、その財産は原則として夫の相続財産となります。
しかし、妻の働きによって夫の財産が維持・増加したと評価でき、しかもその貢献が通常の夫婦間の協力を超える「特別な寄与」と認められる場合には、妻の寄与分が問題になることがあります。
「半分働いたから半分は妻のもの」という制度ではありません
ここは、寄与分について誤解されやすいところです。
たとえば、
「妻が事業に半分貢献したのだから、会社や工場の半分は最初から妻の財産だった」
と考える制度ではありません。
寄与分は、被相続人名義の財産から妻の所有分を取り除く制度ではなく、遺産分割の際に、特別な貢献をした相続人の取得額を調整する制度です。
つまり、
「誰の財産だったのか」ではなく、「その相続人の特別な貢献を、相続分にどのように反映させるか」
という問題です。
どのような場合に寄与分が問題になる?
民法上、寄与分が問題となる代表的なものには、次のようなケースがあります。
家業を無償または低い報酬で手伝った
被相続人が経営する店や農業、会社などについて、長年にわたりほとんど報酬を受けずに働き、その結果として財産の維持・増加に貢献した場合です。
ただ単に家族として少し手伝ったという程度ではなく、通常期待される範囲を超えた特別な貢献であることが重要になります。
被相続人に財産を提供した
たとえば、親の事業のために自分のお金を提供したり、親の借金を代わって返済したりしたことによって、親の財産が維持された場合です。
事情によっては寄与分の問題になる可能性があります。
長期間、療養看護を行った
親が長期間介護を必要とする状態になり、一人の子が仕事を減らすなどして介護を続けたケースです。
介護をしたというだけで当然に寄与分が認められるわけではありません。
親子として通常期待される扶養や援助の範囲を超え、さらに、その介護によって介護費用の支出を免れるなど、被相続人の財産の維持につながったかどうかも重要になります。
「親の面倒を見た=寄与分」ではありません
相続の際によくあるのが、
「私はずっと親の面倒を見てきたのだから、他の兄弟より多くもらえるはず」
という考えです。
お気持ちとしては当然のことだと思います。
しかし法律上の寄与分は、単に、
「親のために頑張った」
「他の兄弟より親孝行だった」
というだけで認められる制度ではありません。
被相続人の財産の維持または増加について、通常期待される程度を超える**「特別の寄与」**があったことが必要です。
そのため、寄与分が認められるかどうかは、具体的な事情によって判断されます。
寄与分はどうやって決める?
寄与分については、まず相続人同士で話し合います。
たとえば、
「長女が母を長年介護してくれたので、その貢献を考慮しよう」
と相続人全員が納得すれば、その内容を踏まえて遺産分割を行うことができます。
一方、
「そこまで特別な介護ではなかった」
「親から生活費をもらっていたではないか」
など、相続人同士で意見が一致しないこともあります。
その場合には、家庭裁判所の調停や審判によって寄与分を定めてもらうことができます。
裁判所も、寄与分について相続人間の協議が調わない場合や協議できない場合には、家庭裁判所の調停・審判を利用できると案内しています。
寄与分を主張できるのは「相続人」
寄与分について、もう一つ重要なポイントがあります。
寄与分を主張できるのは、原則として共同相続人です。
たとえば、
- 長男
- 長女
- 配偶者
など、相続人に該当する人です。
そのため、
「長男のお嫁さんが義母を10年間介護した」
「内縁の妻が長年事業を支えた」
「親しい友人が療養看護を続けた」
という場合、その人自身が相続人でなければ、民法904条の2の「寄与分」を主張することはできません。
長男のお嫁さんには「特別寄与料」の制度があります
相続人ではない親族については、現在は「特別寄与料」という別の制度があります。
たとえば、長男の妻が義父母の療養看護を無償で行い、その結果、義父母の財産の維持または増加について特別な貢献をした場合です。
一定の要件を満たせば、相続人に対して、寄与に応じた金銭の支払いを請求できる可能性があります。
これを「特別寄与料」といいます。
つまり、
相続人の特別な貢献
→「寄与分」
相続人ではない一定の親族の特別な貢献
→「特別寄与料」
と分けると分かりやすいでしょう。
相続人ではない人へ確実に財産を残したいなら遺言も検討
特別寄与料という制度はありますが、
「介護をしてくれたお嫁さんには必ず500万円を残したい」
「長年事業を支えてくれた人に財産を残したい」
という明確な希望があるのであれば、寄与分や特別寄与料だけに頼るのではなく、生前に準備しておくことも大切です。
たとえば、法定相続人ではない人へ財産を残したい場合には、遺言による「遺贈」を検討することができます。
その際には、他の相続人の遺留分にも配慮して内容を考えます。
「介護してくれたから多く残したい」なら、生前に意思を形にしておく
相続が始まった後に、
「母は私に多く残すと言っていた」
「父も、私が家業を手伝ったことを分かっていた」
と言っても、そのご本人に確認することはできません。
そして、寄与分について相続人同士で意見が一致しなければ、家庭裁判所での手続きが必要になる場合もあります。
もしご本人が、
「この子には長年介護をしてもらったので、多く財産を残したい」
「家業を守ってきた長男には、この財産を引き継いでもらいたい」
という明確な希望を持っているのであれば、その思いを遺言書などによって形にしておくことも検討してみましょう。
寄与分と遺言は別のものです
寄与分は、相続が始まった後、相続人の特別な貢献を相続分に反映させる制度です。
一方、遺言は、ご本人が生前に、
「誰にどの財産を残したいか」
という意思を示すものです。
似ているようですが、役割は異なります。
「介護をしてくれた人に感謝を形にしたい」
「事業を支えてくれた家族に財産を多く残したい」
という希望がある場合には、寄与分があるから大丈夫と考えるのではなく、元気なうちに相続全体を考えておくことが大切です。
ハートフルサポート行政書士事務所では、ご家族のこれまでの関わりや財産、ご本人のご希望をお伺いしながら、遺言書の内容を一緒に整理いたします。
「介護をしてくれた子に多く残したい」
「長年家業を手伝ってくれた家族に財産を引き継いでもらいたい」
「相続人ではないお嫁さんにも財産を残したい」
そのようなご希望についても、お気軽にご相談ください。

