長男の嫁は相続人になれる?義父母を介護していた場合の相続について
「長年、義父母の介護をしてきたのに、私は相続人ではないのですか?」
このような疑問を持たれる方がいらっしゃいます。
日本では今でも、長男の妻が義父母の介護や身の回りの世話を担っているご家庭があります。
もちろん、現在は家族の形もさまざまで、「長男の嫁だから介護をする」というものではありません。
ただ実際には、
義父母の通院に付き添ったり、食事を作ったり、長年にわたって介護を続けてきたのが子ども本人ではなく、その配偶者だった
というケースがあります。
ところが、相続では少し注意が必要です。
長男の妻は義父母の相続人ではありません
義父母と長男の妻との間には、通常、法律上の親子関係はありません。
そのため、長男の妻は義父母の法定相続人にはなりません。
たとえば、義父が亡くなり、
- 妻
- 長男
- 次男
がいる場合には、妻と長男・次男が相続人になります。
長男の妻が義父の介護を長年行っていたとしても、それだけで当然に相続人になるわけではありません。
これは「長男の妻」だけではなく、
長女の夫、次男の妻など、子どもの配偶者についても同じです。
どれだけ介護しても相続分はない?
相続人ではない以上、子の配偶者には法定相続分はありません。
たとえば、
「義母の介護を10年間ほとんど一人でしてきた」
という場合でも、それだけで義母の財産の何分の一かを当然に相続できるわけではありません。
一方で、義母の実子である長男や次男には、法律上の相続権があります。
このため、
「実際に一番お世話をした人に相続権がなく、あまり介護に関わらなかった子どもには相続権がある」
ということが起こり得ます。
法律上の相続関係と、家族の中で実際に誰が支えてきたのかは、必ずしも一致しないのです。
「寄与分」は相続人の制度です
相続には「寄与分」という制度があります。
これは、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした相続人について、その貢献を相続分に反映させる制度です。
しかし、寄与分を主張できるのは基本的に相続人です。
そのため、相続人ではない長男の妻自身が、
「私は介護をしたので寄与分をください」
と通常の寄与分を主張することはできません。
相続人ではない親族には「特別寄与料」の制度があります
現在の民法には、相続人ではない親族が被相続人の療養看護などを無償で行い、被相続人の財産の維持または増加について特別な寄与をした場合に、相続人へ金銭を請求できる制度があります。
これを**「特別寄与料」**といいます。
たとえば、長男の妻が義父母の介護を長期間無償で行い、その結果、本来必要だった介護サービスなどの費用が抑えられたといった事情がある場合には、特別寄与料を請求できる可能性があります。
ただし、
「介護をしていたから必ず請求できる」
というものではありません。
通常期待される家族としての援助を超える「特別な寄与」であったかどうかなどが問題になります。
特別寄与料には請求期限があります
特別寄与料については、いつまでも請求できるわけではありません。
相続開始後、一定の期間内に請求する必要があります。
また、相続人との話し合いで金額が決まらない場合には、家庭裁判所の手続きを利用することもあります。
そのため、
「私は義父母を長年介護していたので、特別寄与料について確認したい」
という場合には、相続開始後できるだけ早く専門家へ相談することをおすすめします。
長男が先に亡くなっていたら?
義父母より先に長男が亡くなっていた場合について考えてみましょう。
長男に子どもがいれば、その子、つまり義父母から見た孫が代襲相続人となる場合があります。
しかし、長男の妻が代わりに相続人になるわけではありません。
夫が亡くなった後も義父母と同居し、長年介護を続けてきたとしても、長男の妻に当然の相続権が発生するわけではないのです。
そのため、このようなケースでは特に、生前の準備が重要になります。
義理の娘に財産を残したい場合は遺言書を
義父母が、
「長年介護をしてくれたお嫁さんにも財産を残したい」
と考えているのであれば、遺言書を作成しておく方法があります。
子の配偶者は法定相続人ではありませんので、何も準備をしなければ、原則として相続によって財産を取得することはできません。
一方、遺言によって、
「長男の妻○○に○○万円を遺贈する」
などと定めておけば、財産を残すことができます。
これを「遺贈」といいます。
遺留分にも配慮しましょう
子の配偶者に財産を遺贈するときには、他の相続人の遺留分にも注意が必要です。
たとえば、
「介護をしてくれた長男の妻に全財産を遺贈する」
という内容にすると、配偶者や子など他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。
その場合、相続開始後に遺留分侵害額請求が行われ、かえって長男の妻と他の相続人との間で問題が生じることも考えられます。
介護への感謝を形にしたい場合には、
他の相続人とのバランスも考えながら財産を残す
という視点が大切です。
「介護をしてくれたから、きっと家族も分かってくれる」とは限りません
義父母本人は、
「みんな、○○さんがずっと介護してくれたことを知っているから大丈夫」
と思っているかもしれません。
しかし、相続が始まると、それぞれの相続人に生活や考えがあります。
また、長年の介護についても、
「そこまで大変だったとは知らなかった」
「一緒に住んでいたのだから当然ではないか」
など、受け止め方が違うことがあります。
だからこそ、ご本人が、
「介護をしてくれたことに感謝している」
「この財産を残したい」
という明確な意思を持っているのであれば、元気なうちに形にしておくことが大切です。
遺言書に気持ちを書き残すこともできます
財産を遺贈するだけでなく、遺言書の付言事項に、
「長い間、妻の介護をしてくれてありがとう」
「家族のために支えてくれたことに感謝しています」
など、ご本人の気持ちを書き残すこともできます。
付言事項そのものには、通常、財産を取得させる法的な効力はありません。
しかし、
なぜその人に財産を残したのか
を他の家族へ伝える役割があります。
特に、法定相続人ではない人へ財産を残す場合には、こうした気持ちを伝えておくことが、家族の理解につながる場合もあります。
相続は「家族への感謝」を自動的に反映してくれる制度ではありません
相続では、法律で誰が相続人になるのかが決められています。
そのため、
一番長く介護をしてくれた人
一番身近で支えてくれた人
一番感謝している人
が、必ずしも相続人になるとは限りません。
義理の娘や義理の息子など、法定相続人ではない人へ財産を残したいのであれば、ご本人の意思を遺言書などによって残しておくことが大切です。
ハートフルサポート行政書士事務所では、ご家族の状況やこれまでの経緯、ご本人のお気持ちをお伺いしながら、遺言書の内容を一緒に整理いたします。
「介護をしてくれたお嫁さんに財産を残したい」
「子どもたちにも配慮しながら、感謝を形にしたい」
「どのくらい遺贈すれば遺留分の問題が起こらないのか心配」
そのような段階からでも、お気軽にご相談ください。

