おひとりさまに遺言書は必要?相続人・遺言・死後事務について解説
「自分には配偶者も子どももいないので、相続はあまり関係ない」
このように思っていませんか。
実は、おひとりさまだからこそ、元気なうちに相続や亡くなった後のことを考えておくことが大切な場合があります。
おひとりさまといっても、身寄りがまったくない方だけを指すわけではありません。
生涯結婚していない方だけでなく、
- 配偶者に先立たれた
- 子どもがいない
- 結婚や離婚を経験し、現在は一人で暮らしている
- 親族はいるけれど、ほとんど交流がない
という方もいらっしゃいます。
今回は、おひとりさまの相続と遺言、そして亡くなった後の手続きについて考えてみたいと思います。
おひとりさまでも相続人がいることがあります
「配偶者も子どももいないから、私には相続人はいない」
と思われる方がいらっしゃいます。
しかし、必ずしもそうではありません。
配偶者や子どもがいなくても、父母などの直系尊属が存命であれば、その方が相続人となる場合があります。
父母などの直系尊属もすでに亡くなっている場合には、兄弟姉妹が相続人となります。
さらに、その兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には、その子である甥・姪が代襲相続人となることがあります。
そのため、
「自分が亡くなったら誰が相続人になるのか分からない」
という場合には、一度戸籍から相続関係を確認しておくことをおすすめします。
疎遠な兄弟姉妹や甥・姪が相続人になることも
若い頃には兄弟姉妹との交流があっても、それぞれに家庭を持ち、住む場所が離れると、何年も連絡を取っていないこともあります。
甥や姪になると、
「子どもの頃に会っただけ」
「連絡先も知らない」
ということもあるでしょう。
しかし、交流があるかどうかと、法律上の相続人になるかどうかは別の問題です。
法律上の相続人であれば、長期間交流がなくても相続人になることがあります。
遺言書がなければ、ご本人が特に希望していなかった親族に財産が承継されることもあります。
「お世話になった人に財産を残したい」なら遺言書を
おひとりさまの場合、
「親族よりも、長年お世話になった人に財産を残したい」
「一緒に支え合ってきた友人に残したい」
「自分が応援している団体に寄付したい」
と考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、どれほど親しい関係であっても、友人や知人は原則として法定相続人にはなりません。
そのため、その方に財産を残したいのであれば、遺言書による「遺贈」などを検討する必要があります。
兄弟姉妹には遺留分がありません
おひとりさまの遺言を考えるうえで、大切なポイントがあります。
それは、
兄弟姉妹には遺留分がない
ということです。
甥や姪が兄弟姉妹を代襲して相続人になる場合にも、遺留分はありません。
そのため、父母などの直系尊属がすでに亡くなっていて、兄弟姉妹や甥・姪が相続人となるケースでは、
「お世話になったAさんに全財産を遺贈する」
「自分の財産を○○団体へ寄付する」
といった遺言を残すことで、ご自身の希望を実現できる場合があります。
相続人が本当に誰もいなかったら、財産はどうなる?
兄弟姉妹や甥・姪もおらず、法律上の相続人が一人もいない場合もあります。
この場合、亡くなった方の財産が直ちに国のものになるわけではありません。
家庭裁判所によって相続財産清算人が選任され、債務の支払いや相続人の捜索など、法律で定められた手続きが行われます。
また、亡くなった方と特別な関係にあった人が「特別縁故者」として財産の分与を申し立てることができる場合もあります。
そのような手続きを経ても残った財産は、最終的に国庫に帰属することになります。
「自分の財産を○○に残したい」という明確な希望があるのであれば、相続人がいないからこそ、元気なうちに遺言書を作成しておくことが大切です。
遺言書だけでなく「誰が実際に手続きをするのか」も考える
おひとりさまの遺言では、
「誰に財産を残すのか」
だけでなく、
「自分が亡くなった後、誰がその遺言を実現するのか」
についても考えておくことが大切です。
そのために利用できるのが「遺言執行者」です。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人です。
遺言書の中で、あらかじめ遺言執行者を指定しておくことができます。
遺言執行者は誰でもいい?
遺言執行者には一定の欠格事由がありますが、親族や知人を指定することもできますし、専門家を指定することも考えられます。
ただ、おひとりさまの場合には、
「頼もうと思っている友人も自分と同じくらいの年齢」
ということもあります。
遺言書を作成してから実際に相続が開始するまで、10年、20年と時間が経過する可能性もあります。
そのため、
その人に本当にお願いできるのか
将来も手続きを行える状況にあるのか
ということも考えておく必要があります。
また、遺言執行者として指定された人は就任を辞退することもできます。
可能であれば、事前にご本人へ相談しておくと安心です。
遺言執行者への報酬も決めておく
遺言執行者を指定する場合には、報酬について遺言書で定めておくこともできます。
特に、
- 財産の種類が多い
- 不動産がある
- 多数の金融機関に預貯金がある
- 複数の人へ遺贈する
- 団体へ寄付する
といった場合には、遺言執行にさまざまな手続きが必要になる可能性があります。
誰にお願いするのかだけではなく、実際の事務についても考えておきましょう。
遺言書では葬儀や納骨まですべて解決できません
ここは、おひとりさまの終活ではとても重要なところです。
遺言書を作成して、
「財産を誰に残すか」
を決めたとしても、それだけでは亡くなった後に必要となるすべての手続きに対応できるわけではありません。
たとえば、
- 関係者への連絡
- 葬儀や火葬に関する手続き
- 納骨
- 住居の明渡し
- 電気・ガス・水道などの解約
- 携帯電話やインターネットの解約
- 家財の整理
- 各種契約の解約
など、亡くなった後にはさまざまな事務が発生します。
こうした事務について、生前に信頼できる人へ依頼しておく方法の一つが「死後事務委任契約」です。
「遺言」と「死後事務委任」は役割が違います
遺言と死後事務委任契約は、同じものではありません。
簡単に分けると、
遺言
→ 財産を誰にどのように承継させるか
死後事務委任契約
→ 葬儀・納骨・各種契約の解約など、亡くなった後の事務を誰にお願いするか
という違いがあります。
おひとりさまの場合には、どちらか一方だけではなく、両方を組み合わせて準備した方がよい場合があります。
元気なうちのことも考えておきましょう
さらに、おひとりさまの場合には、
「亡くなった後」だけでなく、「亡くなるまで」のこと
についても考えておくことが大切です。
たとえば、
「入院したとき、誰に連絡してもらうのか」
「高齢者施設に入ることになったらどうするのか」
「判断能力が低下したとき、財産管理をどうするのか」
といった問題です。
遺言書は、原則として亡くなった後に効力を生じるものです。
そのため、生前の財産管理などについては、遺言とは別の準備が必要になる場合があります。
おひとりさまの終活は「自分で決められるうちに」
おひとりさまの終活というと、
「まだまだ先の話」
と思われるかもしれません。
しかし、元気なうちであれば、
自分の財産を誰に残すのか
お葬式をどうしたいのか
お墓や納骨をどうするのか
亡くなった後の手続きを誰にお願いするのか
を、自分自身で考えて決めることができます。
そして、気持ちが変われば、遺言書を見直すこともできます。
大切なのは、不安になることではなく、自分の希望を自分で決められるうちに少しずつ整理しておくことです。
ハートフルサポート行政書士事務所では、おひとりさまの遺言書作成について、ご本人のお気持ちをお伺いしながら一緒に整理いたします。
「自分が亡くなったら誰が相続人になるのか分からない」
「甥や姪ではなく、お世話になった人に財産を残したい」
「遺言書だけでなく、亡くなった後のことも考えておきたい」
そのような段階からでも、お気軽にご相談ください。

