遺言を作成する人は増えている?公正証書遺言の件数から見る変化
「遺言書は、財産がたくさんある人が作るもの」
「まだ元気だから、遺言書なんて必要ない」
遺言について、このようなイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、日本でも遺言書を作成する方は長期的に見ると増えてきています。
その変化がよくわかるのが、公正証書遺言の作成件数です。
公正証書遺言の作成件数
日本公証人連合会が公表している統計を見ると、公正証書遺言の作成件数は次のように推移しています。
| 年 | 公正証書遺言の作成件数 |
|---|---|
| 昭和52年(1977年) | 26,629件 |
| 平成23年(2011年) | 78,754件 |
| 平成24年(2012年) | 88,156件 |
| 平成25年(2013年) | 96,020件 |
| 平成26年(2014年) | 104,490件 |
| 平成27年(2015年) | 110,778件 |
| 平成28年(2016年) | 105,350件 |
| 平成29年(2017年) | 110,191件 |
| 平成30年(2018年) | 110,471件 |
| 令和元年(2019年) | 113,137件 |
| 令和2年(2020年) | 97,700件 |
| 令和3年(2021年) | 106,028件 |
| 令和4年(2022年) | 111,977件 |
| 令和5年(2023年) | 118,981件 |
| 令和6年(2024年) | 128,378件 |
| 令和7年(2025年) | 128,035件 |
昭和52年には年間約2万6千件だった公正証書遺言が、現在では年間12万件を超える水準になっています。
長い期間で見ると、遺言書を作成して自分の意思を残そうとする方が大きく増えていることがわかります。
なぜ遺言書を作成する人が増えているのでしょうか
理由は一つではありません。
家族のかたちや財産の内容、老後の生活など、相続を取り巻く環境そのものが変化していることが背景にあると考えられます。
家族関係や家族のかたちが多様になっている
離婚や再婚、子どものいない夫婦、事実婚など、家族のかたちはさまざまです。
例えば、再婚して前婚の子どもがいる場合には、相続関係が複雑になることがあります。
また、子どもがいない夫婦の場合、一方が亡くなると、配偶者だけではなく亡くなった方の兄弟姉妹などが相続人になる場合もあります。
「自分の財産を誰に遺したいのか」を明確にするため、遺言書が重要になるケースがあります。
相続争いは「財産が多い家庭だけ」の問題ではありません
相続について、
「うちには大した財産がないから、もめることはないでしょう」
と思われる方も少なくありません。
しかし、相続財産の金額だけで、争いが起こるかどうかが決まるわけではありません。
特に、自宅などの不動産が財産の大部分を占めている場合には、現金のように簡単に分けることができません。
「誰が自宅を相続するのか」
「他の相続人には何を渡すのか」
という問題が生じることがあります。
遺産の金額にかかわらず、自分が元気なうちに財産の行き先を考えておくことには大きな意味があります。
介護やお世話になった人への思いを遺したい
高齢化が進むなかで、介護や老後の生活も遺言を考えるきっかけの一つになっています。
例えば、
「長年介護をしてくれた子どもに少し多く財産を遺したい」
「相続人ではないけれど、最後まで自分を支えてくれた人に財産を遺したい」
という希望を持つこともあります。
しかし、何もしなければ、原則として法律で定められた相続分を基準として相続手続きが進められます。
自分の思いを相続に反映させたい場合には、元気なうちに遺言書を作成して意思を形にしておくことが大切です。
自筆証書遺言書保管制度も始まっています
遺言を取り巻く環境も変わっています。
令和2年(2020年)7月から、法務局で「自筆証書遺言書保管制度」が始まりました。
自分で作成した遺言書を法務局に預けることができる制度です。
これによって、
- 遺言書を紛失してしまう
- 誰かに遺言書を破棄・改ざんされる
- 相続人が遺言書を見つけられない
といった自宅保管による問題を防ぎやすくなりました。
また、法務局に保管された自筆証書遺言については、家庭裁判所での検認も不要です。
公正証書遺言だけではなく、自筆証書遺言についても利用しやすい環境が整えられてきています。
遺言書は「財産を分けるためだけの書類」ではありません
遺言書というと、どうしても「財産を誰にいくら渡すかを決めるもの」と考えがちです。
もちろん、それも大切な役割です。
しかし、遺言書を作成することは、
自分が大切にしてきた財産を、誰に、どのように引き継いでもらいたいのかを考えること
でもあります。
そして、その意思をきちんと形にしておくことは、残されたご家族が相続について話し合う負担を少なくすることにもつながります。
「まだ早い」と思える元気なうちだからこそ、落ち着いて考えることができます。
ご自身の財産やご家族について一度整理してみることから、将来の相続について考えてみてはいかがでしょうか。

