相続にはどんな種類がある?遺言がある場合・ない場合の相続をわかりやすく解説
ご家族が亡くなり、相続手続きを始めることになったとき、
「まず何から確認すればよいのでしょうか?」
と戸惑われる方も多いと思います。
相続では、相続人や財産を調べることはもちろん大切ですが、最初に確認しておきたいことの一つが、
「遺言書があるかどうか」
です。
遺言書がある場合とない場合では、誰がどの財産を取得するのかを決める方法が大きく変わることがあります。
今回は、
遺言書がある場合の相続
遺言書がない場合の相続
に分けて、相続の基本的な考え方をご説明します。
相続が始まったら、まず遺言書の有無を確認
亡くなった方が遺言書を残している場合には、原則として、その遺言の内容に従って財産を承継していくことになります。
一方、遺言書がなく、相続人が複数いる場合には、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行うことになります。
大きく分けると、
遺言書がある
→ 原則として遺言の内容に従って相続する
遺言書がない
→ 法定相続人を確認し、必要に応じて遺産分割協議を行う
という違いがあります。
遺言書がある場合の相続
有効な遺言書がある場合には、まずその内容を確認します。
たとえば、
「自宅を妻に相続させる」
「○○銀行の預金を長男に相続させる」
「お世話になったAさんに500万円を遺贈する」
などと記載されていれば、原則としてその内容に従って手続きを進めます。
遺言によって、法定相続分とは異なる財産の分け方を指定することもできます。
自筆証書遺言を見つけても、すぐに開封しない
亡くなった方の自宅から封をした自筆証書遺言が見つかった場合には、注意が必要です。
家庭裁判所の検認が必要となる遺言書については、勝手に開封せず、家庭裁判所で手続きを行います。
検認とは、遺言書の状態や内容を確認し、その後の偽造や変造を防ぐための手続きです。
ただし、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認は不要です。
公正証書遺言についても、家庭裁判所の検認は必要ありません。
遺言執行者が指定されている場合
遺言書には「遺言執行者」が指定されていることがあります。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人です。
遺言の内容によっては、預貯金の解約や名義変更、遺贈などの手続きを進めることになります。
遺言書を確認したときには、
誰に何を残すのか
だけではなく、
遺言執行者が指定されているか
という点も確認しましょう。
遺言書があっても「遺留分」に注意
遺言書があれば、どのような財産の分け方でも問題なく実現できるわけではありません。
一定の相続人には、法律上保障された最低限の取り分である**「遺留分」**があります。
遺留分が認められるのは、配偶者、子などの直系卑属、父母などの直系尊属です。
兄弟姉妹には遺留分はありません。
たとえば、
「全財産を長男に相続させる」
という遺言書があった場合、他の相続人の遺留分を侵害している可能性があります。
遺留分を侵害した遺言は無効になる?
ここは誤解されやすいところです。
遺留分を侵害する遺言書だからといって、遺言書そのものが当然に無効になるわけではありません。
遺留分を侵害された人が権利を行使する場合には、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することになります。
また、遺留分侵害額請求には期間制限があります。
原則として、
相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年
行使しないと時効によって消滅し、
相続開始から10年
を経過した場合にも行使できなくなります。
そのため、遺言書を作成する段階から、遺留分にも配慮しておくことが大切です。
遺言書と違う分け方をすることはできる?
遺言書がある場合でも、事情によっては、相続人など関係者の合意により遺言と異なる遺産分割が行われることがあります。
ただし、
- 遺言で遺産分割が禁止されていないか
- 遺言執行者がいるか
- 相続人以外の受遺者がいるか
などによっても取り扱いが異なります。
そのため、
「相続人全員が賛成すれば、いつでも遺言書を無視できる」
と単純に考えることはできません。
遺言と異なる遺産分割を考える場合には、遺言書全体の内容を確認する必要があります。
遺言書がない場合の相続
それでは、遺言書がない場合はどうなるのでしょうか。
まず戸籍を収集して、誰が法定相続人なのかを確定します。
次に相続財産を確認します。
相続人が複数いて、遺産分割が必要な場合には、相続人全員で、
「誰がどの財産を取得するのか」
について話し合います。
これが「遺産分割協議」です。
法定相続分とは?
民法では、誰が相続人になるのかとともに、それぞれの相続人の基本的な取り分である「法定相続分」が定められています。
たとえば、相続人が妻と子ども2人の場合には、
妻 2分の1
子ども それぞれ4分の1
が法定相続分です。
しかし、ここで大切なのは、
必ずこの割合どおりに財産を分けなければならないわけではない
ということです。
相続人全員が合意すれば、自由な分け方もできる
たとえば、相続財産に自宅と預貯金があり、
「自宅は今後も母が住むので、母が取得しよう」
「子どもたちは預貯金を取得しよう」
と相続人全員が納得すれば、そのような遺産分割をすることもできます。
つまり、法定相続分は遺産分割を考える際の重要な基準ですが、相続人全員の合意によって、それとは異なる分け方をすることもできます。
遺産分割協議には相続人全員が参加します
遺産分割協議で重要なのは、相続人全員が参加することです。
一人でも相続人が抜けた状態で遺産分割協議を行ってしまうと、原則として有効な遺産分割協議にはなりません。
そのため、
「家族はこの3人だけ」
と思っていても、まず戸籍によって相続人を正確に確認する必要があります。
以前の結婚で生まれた子、認知した子、養子などが相続人になる場合もあります。
介護をした人は多く相続できる?
「私は母の介護を10年間してきたので、他の兄弟より多く相続したい」
というケースもあります。
相続人全員がその事情を理解して合意すれば、その貢献を考慮した遺産分割をすることもできます。
また、一定の場合には「寄与分」という制度が問題になることもあります。
ただし、
介護をしたから当然に法定相続分が増える
というものではありません。
介護や家業への貢献を相続に反映させたい場合には、寄与分の要件を確認したり、生前に遺言書を作成したりすることも検討します。
遺産分割協議がまとまらなかったら?
相続人同士で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の「遺産分割調停」を利用することができます。
調停では、裁判官や調停委員を介し、それぞれの事情や希望を聞きながら合意を目指します。
調停でも話し合いがまとまらず不成立となった場合には、原則として自動的に審判手続へ移行します。
審判では裁判官が、遺産に含まれる財産の種類や性質、その他一切の事情を考慮して分割方法を判断します。
遺産分割協議がまとまったら「遺産分割協議書」を作成
話し合いがまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」にまとめます。
たとえば、
「大阪市○○区の土地建物は妻が取得する」
「○○銀行の預貯金は長男が取得する」
というように、誰がどの財産を取得するのかを明確にします。
その遺産分割協議書を利用して、不動産の相続登記や金融機関の相続手続きなどを進めます。
遺産分割はいつまでにすればいい?
遺産分割そのものには、一律の「○か月以内」という期限が設けられているわけではありません。
しかし、
「期限がないから、何年でもそのままでよい」
ということではありません。
相続税の申告には期限がありますし、相続登記にも義務化された期限があります。
さらに現在の民法では、相続開始から長期間経過した場合、具体的相続分に関する一部のルールにも影響があります。
そのため、相続が始まったら長期間放置せず、できるだけ早めに相続人と財産を確認して手続きを進めることが大切です。
遺言がある相続と、ない相続の大きな違い
簡単に整理すると、
遺言書がある場合
遺言者本人が、生前に「誰に何を残すか」を決めています。
一方、
遺言書がない場合
亡くなった後に、相続人が「誰が何を取得するか」を話し合います。
この違いはとても大きなものです。
特に、
- 不動産がある
- 相続人が多い
- 子どもがいない
- 再婚している
- 疎遠な相続人がいる
- 相続人ではない人に財産を残したい
- 特定の人に自宅や事業用財産を残したい
といった場合には、元気なうちに遺言書について考えておくことで、残された方の手続きを進めやすくできることがあります。
相続は「遺言書があるか」の確認から
相続手続きは、一つとしてまったく同じものはありません。
ご家族の構成も、財産の内容も、亡くなった方のお気持ちもそれぞれ違います。
そのため、まずは、
遺言書があるのか
誰が相続人なのか
どのような財産があるのか
を一つずつ確認することが大切です。
ハートフルサポート行政書士事務所では、戸籍による相続人調査、相続関係の整理、遺産分割協議書の作成、遺言書作成など、相続に関する手続きをお手伝いしています。
「何から始めればよいのか分からない」
「遺言書が見つかったけれど、どうすればよいのか分からない」
「相続人が多く、戸籍をどこまで集めればよいのか分からない」
そのような段階からでも、お気軽にご相談ください。

