相続廃除とは?相続させたくない子を相続人から外すことはできる?
「長年ひどい扱いを受けてきた子には、財産を相続させたくない」
「親に暴力を振るっていた相続人にも、相続権はあるのでしょうか」
このような場合に問題となる制度の一つが、「推定相続人の廃除」です。
相続人は、被相続人との関係が悪いというだけで当然に相続権を失うわけではありません。
たとえ長年交流がなかったとしても、法律上の相続人であれば原則として相続権があります。
しかし、一定の重大な事情がある場合には、家庭裁判所の手続きによって、その人の相続権を失わせることができます。
これを「相続廃除」といいます。
相続廃除とは?
民法では、遺留分を有する推定相続人が、
被相続人に対して虐待をした
重大な侮辱を加えた
その他の著しい非行があった
場合に、被相続人がその推定相続人の廃除を家庭裁判所へ請求できると定めています。
つまり、
「この人には財産を渡したくない」
という気持ちだけで自由に相続人から外すことができる制度ではありません。
家庭裁判所が事情を確認し、廃除を認める必要があります。
誰でも相続廃除の対象になる?
相続廃除の対象になるのは、
遺留分を有する推定相続人
です。
具体的には、
- 配偶者
- 子や孫などの直系卑属
- 父母や祖父母などの直系尊属
などが対象となり得ます。
一方、兄弟姉妹には遺留分がありません。
そのため、兄弟姉妹は相続廃除の対象にはなりません。
なぜ兄弟姉妹は廃除する必要がないの?
たとえば、子どもがおらず、両親もすでに亡くなっている人の場合には、兄弟姉妹が相続人になることがあります。
しかし、兄弟姉妹には遺留分がありません。
そのため、
「兄弟には財産を相続させたくない」
という場合には、一定の場合、別の人へ財産を相続・遺贈させる内容の遺言書を作成することで対応することができます。
わざわざ家庭裁判所で相続廃除をする必要がないため、兄弟姉妹は廃除の対象から外されています。
どのような場合に相続廃除が認められる?
民法では、大きく次のような事情が挙げられています。
被相続人に対する虐待
たとえば、継続的な暴力や重大な身体的・精神的虐待などです。
被相続人に対する重大な侮辱
単なる親子げんかや一時的な口論ではなく、被相続人との関係を著しく破壊するほどの重大な侮辱が問題になります。
その他の著しい非行
虐待や重大な侮辱には直接該当しなくても、それと同程度に相続関係から排除することが相当と考えられるような重大な行為が問題となります。
ただし、
「親の言うことを聞かなかった」
「何年も実家に帰ってこなかった」
「親子仲が悪かった」
という程度で当然に廃除が認められるわけではありません。
相続権を失わせる非常に重大な制度ですので、家庭裁判所では具体的な事情を踏まえて判断されます。
親が「相続させない」と言っただけでは廃除されません
ここは重要です。
たとえば父親が、
「長男には絶対に財産を渡さない」
と言っていたとしても、それだけで長男の相続権がなくなるわけではありません。
また、紙に、
「長男を相続人から外す」
と書いただけでも、それだけで相続廃除が成立するわけではありません。
相続廃除には、家庭裁判所の手続きが必要です。
生前に相続廃除を申し立てる方法
被相続人が生きている間に、自ら家庭裁判所へ推定相続人の廃除を請求することができます。
家庭裁判所では、虐待や重大な侮辱、著しい非行などがあったのかを具体的に確認して判断します。
そのため、相続廃除を検討する場合には、
- 診断書
- 写真
- メールやメッセージ
- 警察への相談記録
- その他、具体的な事情が分かる資料
などが重要になる場合があります。
遺言で相続廃除をすることもできます
相続廃除は、生前に家庭裁判所へ申し立てる方法だけではありません。
遺言書の中で、
「○○を相続人から廃除する」
という意思を表示することもできます。
ただし、遺言書に廃除すると書いただけで、死亡と同時に自動的に廃除されるわけではありません。
遺言による廃除の場合には、遺言者が亡くなった後、遺言執行者が家庭裁判所へ廃除の請求を行う必要があります。
そのため、遺言書で相続廃除を希望する場合には、遺言執行者についてもきちんと考えておく必要があります。
遺言による廃除では、事情を残しておくことも重要です
遺言による廃除には一つ難しい点があります。
家庭裁判所で廃除の手続きをするときには、遺言者本人はすでに亡くなっています。
そのため、
「なぜその人を廃除したかったのか」
を本人に確認することができません。
遺言による廃除を考えるのであれば、虐待や重大な侮辱など、廃除を希望する理由となった具体的な事情や資料を残しておくことも大切です。
相続廃除と相続欠格はどう違う?
「相続廃除」とよく似た制度に、**「相続欠格」**があります。
どちらも結果として相続権を失う制度ですが、大きな違いがあります。
相続欠格は、民法で定められた重大な行為に該当すると、法律上当然に相続資格を失う制度です。
たとえば、相続について不当に利益を得る目的で被相続人などを故意に死亡させる行為や、遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿する行為など、民法891条に定められた事由があります。
一方、相続廃除は、
家庭裁判所の手続きを経て相続権を失わせる制度
です。
つまり、
相続欠格
→ 一定の欠格事由に該当すれば法律上当然に相続資格を失う
相続廃除
→ 被相続人の意思に基づき、家庭裁判所の手続きを経て相続権を失わせる
という違いがあります。
廃除を取り消すこともできます
一度相続廃除が認められた後でも、
「本人が反省して関係が修復した」
「もう一度相続させたい」
と被相続人の気持ちが変わることもあります。
その場合には、家庭裁判所へ廃除の取消しを請求することができます。
また、遺言によって廃除の取消しの意思を表示することもできます。
相続廃除は、被相続人の意思を尊重する制度ですので、廃除した後に気持ちが変わった場合にも対応できる仕組みになっています。
廃除された人の子どもはどうなる?
たとえば、長男が相続廃除された場合を考えてみましょう。
長男自身は相続権を失います。
しかし、長男に子どもがいる場合、その子、つまり被相続人から見た孫が代襲相続人となることがあります。
つまり、
「長男を廃除すれば、その家族全員に財産が行かなくなる」
というわけではありません。
相続廃除を考えるときには、この点も確認しておくことが大切です。
「相続させたくない」だけなら、まず遺言を検討することも
相続廃除は、相続権そのものを失わせる非常に強い制度です。
そのため、
「長男とは疎遠だから相続させたくない」
「他の子に多く財産を残したい」
というだけで相続廃除を利用するものではありません。
そのような場合には、まず遺言書によって財産の分け方を指定する方法を検討します。
ただし、子や配偶者などには遺留分がありますので、
遺言で財産を渡さないようにしたからといって、完全に権利をなくせるとは限りません。
だからこそ、重大な事情があり、遺留分を含めて相続権そのものを失わせたい場合に「相続廃除」という制度が問題になります。
相続廃除は慎重に考える必要があります
相続廃除は、
「親子仲が悪いから使う制度」
ではありません。
家庭裁判所によって認められれば、その人は相続権を失います。
そのため、虐待や重大な侮辱、著しい非行などの事情があるのかを慎重に確認する必要があります。
また、遺言によって廃除を希望する場合には、
なぜ廃除を望むのか
その事情を示す資料はあるのか
誰を遺言執行者にするのか
廃除された人の子が代襲相続人にならないか
といったところまで考えておく必要があります。
ハートフルサポート行政書士事務所では、ご本人のお気持ちやご家族の状況をお伺いしながら、遺言書にどのような内容を残すのがよいのか整理いたします。
「特定の相続人には財産を残したくない」
「相続廃除と遺言のどちらを考えればよいのか分からない」
「遺言の中で廃除の意思を残しておきたい」
そのような場合にも、まずは事情をお聞かせください。

