遺言書は何歳から作れる?認知症でも作成できる?「遺言能力」について解説
「遺言書は何歳から作ることができるのでしょうか」
「高齢になってからでも遺言書は作れますか?」
「認知症になったら、もう遺言書は作れないのでしょうか?」
遺言書を作成するためには、法律上の一定の能力が必要です。
これを「遺言能力」といいます。
遺言書は、ご本人の意思によって作成するものです。
そのため、遺言書を書いた時点で、その内容や結果を理解し判断できる状態であったかどうかが、とても重要になります。
今回は、遺言書を作ることができる人と「遺言能力」についてご説明します。
遺言書は15歳から作ることができます
民法では、
「15歳に達した者は、遺言をすることができる」
と定められています。
つまり、18歳の成人になっていなくても、満15歳になれば遺言書を作成することができます。
反対に、15歳に達していない人が作成した遺言は有効とは認められません。
遺言については、一般的な契約などとは異なる特別なルールが設けられています。
遺言書を作るには「遺言能力」が必要です
年齢の要件を満たしていれば、どのような状態でも遺言書を作れるわけではありません。
民法では、
遺言者は、遺言をするときに、その能力を有していなければならない
と定めています。
ここで問題となるのが「遺言能力」です。
簡単にいうと、
自分がどのような内容の遺言をしているのか、その遺言によってどのような結果になるのかを理解し、判断できる能力
と考えると分かりやすいでしょう。
遺言能力は「遺言書を作ったとき」に判断されます
大切なのは、遺言書を作成した時点で遺言能力があったかどうかです。
たとえば、遺言書を作成した数年後に認知症が進んだとしても、それだけで以前作成した遺言書が無効になるわけではありません。
遺言書を作成した当時に、遺言内容を理解し判断できる能力があったのであれば、後になって判断能力が低下したこととは分けて考える必要があります。
反対に、遺言書を作成した時点ですでに判断能力が大きく低下し、遺言の内容や結果を理解できない状態であった場合には、その遺言の有効性が問題になることがあります。
認知症になったら遺言書は作れない?
「認知症と診断されたら、もう遺言書は作れませんか?」
というご相談があります。
認知症の診断を受けているという事実だけで、一律に遺言書を作成できなくなるわけではありません。
重要なのは、病名だけではなく、遺言書を作成する時点で、その方に遺言内容を理解し判断する能力があるかどうかです。
認知機能の状態には個人差があります。
また、遺言の内容が単純なのか複雑なのか、財産や家族関係をどの程度理解できているのかなど、さまざまな事情が関係します。
そのため、
「認知症だから有効」
「認知症だから無効」
と病名だけで判断することはできません。
高齢者の遺言で問題になりやすい「本当に本人の意思だったのか」
高齢の方が作成した遺言書について、相続開始後に問題となることがあります。
たとえば、
「父はその頃かなり認知機能が低下していた」
「こんな内容の遺言を書くはずがない」
「一人の子どもに言われるまま作ったのではないか」
といった疑問を他の相続人が持つ場合です。
遺言者が亡くなった後では、
「これは本当にあなたの意思だったのですか?」
と本人に確認することはできません。
そのため、遺言書を作成するときには、遺言の内容だけではなく、遺言者本人の意思で作成したことが後から分かるようにしておくことも大切になります。
遺言能力をめぐる争いを防ぐためにできること
特に高齢の方や、将来判断能力の低下が心配される方が遺言書を作成する場合には、後の紛争を防ぐための準備を考えておきましょう。
公正証書遺言を検討する
公正証書遺言は、公証人が遺言者本人の意思を確認しながら作成する遺言です。
公証人は、本人の意思や遺言内容を確認したうえで公正証書を作成します。
そのため、高齢の方が遺言書を作成する場合には、公正証書遺言を選択することには大きな意味があります。
ただし、公正証書遺言であれば、後から遺言能力が絶対に争われないというわけではありません。
遺言者の状態に心配がある場合には、さらに別の方法も検討します。
医師の診断書などを残しておく
遺言書を作成する時期の本人の判断能力について、医師に診察を受け、診断書や診療記録を残しておくことも考えられます。
後になって遺言能力について争いが生じた場合、遺言書を作成した当時の本人の状態を確認するための資料となる可能性があります。
本人の意思が分かる記録を残す
必要に応じて、遺言書を作成する際の本人の様子や意思確認の状況を記録しておくことも考えられます。
ただし、単に動画を撮影しておけば遺言能力が証明されるというものではありません。
大切なのは、
誰が相続人なのか
どのような財産を持っているのか
誰に何を残そうとしているのか
なぜそのような遺言をするのか
といったことについて、本人が理解したうえで自分の意思を示していることです。
遺言書は早めに考えることも大切です
「まだ元気だから、遺言書はもっと先でいい」
と思われる方も多いと思います。
もちろん、遺言書は急いで作らなければならないものではありません。
しかし、遺言書は本人に遺言能力がある間にしか作ることができません。
いざ必要になったときに本人の判断能力が低下していると、家族が代わりに遺言書を作ることはできません。
遺言はあくまで本人自身の意思によって行うものだからです。
「いつか作ろう」と思っているのであれば、元気でご自身の意思を十分に伝えられるうちに、一度内容を考えてみることをおすすめします。
成年被後見人は遺言書を作ることができる?
成年被後見人については、特別な規定があります。
成年被後見人であっても、判断能力を一時的に回復しているときには、一定の要件のもとで遺言をすることができます。
この場合には、医師2人以上の立会いが必要です。
そして、遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をするときに精神上の障害によって物事を理解し判断する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記し、署名・押印する必要があります。
通常の遺言とは異なる特別な方式が定められていますので、慎重に手続きを進める必要があります。
「まだ早い」と思えるときが、考えやすい時期かもしれません
遺言書は、判断能力が低下してから慌てて作るものではありません。
元気なときであれば、
「誰に何を残そうか」
「自宅はどうしようか」
「家族にはどのように伝えようか」
と、ご自身でゆっくり考えることができます。
また、状況が変われば、後から遺言書を見直すこともできます。
ハートフルサポート行政書士事務所では、ご本人のお話を直接お伺いし、ご家族や財産の状況、ご本人の希望を整理しながら遺言書作成のお手伝いをしています。
「まだ遺言書を作るかどうか決めていない」
「高齢の親が遺言書を作りたいと言っている」
「公正証書遺言にした方がよいのか分からない」
そのような段階からでも、お気軽にご相談ください。

