遺言書でできることとは?できること・できないことをわかりやすく解説
「遺言書には、財産の分け方を書くもの」
このようなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
もちろん、誰にどの財産を引き継いでもらうかを決めることは、遺言書の大切な役割です。
しかし、遺言書でできることはそれだけではありません。
たとえば、相続人ではない人に財産を残したり、遺言執行者を指定したり、未成年の子どもの後見人を指定したりすることもできます。
今回は、**「遺言書でできること」と「遺言書ではできないこと」**について、できるだけわかりやすくご紹介します。
遺言書に書けば何でも法的な効力があるわけではありません
遺言書には、自分の希望や家族への思いなど、さまざまなことを書くことができます。
しかし、遺言書に書いた内容のすべてに法律上の効力が生じるわけではありません。
法律上、遺言によって効力を生じさせることができる事項は決められています。
このような事項を「遺言事項」といいます。
それでは、具体的にどのようなことができるのでしょうか。
1.誰にどの財産を引き継いでもらうか決める
遺言書の代表的な役割です。
たとえば、
- 自宅の土地・建物は妻に相続させる
- 預貯金は長男と長女に分ける
- 特定の不動産を長男に相続させる
など、財産の承継について指定することができます。
不動産など簡単に分けることができない財産がある場合には、遺言書で取得する人を決めておくことで、相続手続きを進めやすくなることがあります。
2.法定相続分とは異なる相続分を指定する
民法では、相続人ごとの法定相続分が定められています。
しかし、遺言によって法定相続分とは異なる割合を指定することもできます。
たとえば、
「妻に4分の3、長男に4分の1を相続させる」
というような指定です。
ただし、兄弟姉妹以外の一定の相続人には「遺留分」があります。
そのため、相続分を大きく変更するときには、遺留分にも配慮して遺言書を作成することが大切です。
3.相続人ではない人に財産を残す
遺言によって、法定相続人ではない人に財産を残すこともできます。
これを「遺贈」といいます。
たとえば、
- 内縁の妻・夫
- 息子や娘の配偶者
- 相続人にならない孫
- お世話になった人
- 友人
- 団体や法人
などに財産を残したい場合です。
「長年介護をしてくれた息子のお嫁さんに財産を残したい」
という場合でも、その方が当然に相続人になるわけではありません。
このような希望がある場合には、遺言書による遺贈を検討することになります。
4.遺産の分け方を指定する
遺言によって、遺産分割の方法を指定することができます。
たとえば、
「自宅は妻に、○○銀行の預金は長男に」
というように、具体的な財産の分け方を決めておく方法です。
また、遺産分割方法の指定を第三者に委託することもできます。
さらに、相続開始から5年を超えない期間を定めて、遺産分割を禁止することもできます。
5.遺言執行者を指定する
遺言書の内容を実際に実現するために必要な手続きを行う人を「遺言執行者」といいます。
遺言書の中で、
「○○を遺言執行者に指定する」
と定めておくことができます。
遺言の内容によっては、不動産や預貯金などについてさまざまな手続きが必要になります。
あらかじめ遺言執行者を指定しておくことで、遺言者が亡くなった後の手続きを進めやすくすることができます。
6.子どもを認知する
遺言によって子どもを認知することもできます。
認知によって法律上の親子関係が生じるため、相続にも関係する重要な事項です。
遺言による認知がある場合には、遺言執行者が必要な届出を行います。
7.相続人を廃除する・廃除を取り消す
一定の事情がある場合には、遺言によって推定相続人の廃除の意思を示すこともできます。
また、生前に行った廃除を取り消す意思を遺言に残すこともできます。
ただし、遺言書に「○○には相続させない」と書くだけで当然に廃除されるわけではありません。
遺言による廃除の場合には、遺言者の死亡後、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求を行うことになります。
8.未成年の子どもの後見人を指定する
未成年の子どもがいる場合には、一定の要件のもと、遺言によって未成年後見人を指定することができます。
また、未成年後見監督人を指定することもできます。
自分が亡くなった後の子どもの生活を考えるうえで、大切な遺言事項の一つです。
9.お墓や仏壇などを引き継ぐ人を指定する
お墓、仏壇、位牌などは、一般的な相続財産とは異なる取り扱いを受けます。
これらは「祭祀財産」と呼ばれ、遺言などによって祭祀を主宰する人を指定することができます。
「自分が亡くなった後、お墓を誰に守ってもらうのか」
ということも、遺言を考える際に整理しておきたいことの一つです。
遺言書ではできないこともあります
遺言書に書けば、どのような内容でも法律上実現できるわけではありません。
たとえば、相手の合意が必要な契約を、遺言だけで成立させることはできません。
売買契約などは相手方との合意によって成立するものですから、
「私が亡くなったら、この土地を○○さんに500万円で売る」
と遺言書に書いただけで、当然に売買契約が成立するわけではありません。
また、
「兄弟仲良く暮らしてほしい」
「毎年お墓参りをしてほしい」
「妻のことを大切にしてほしい」
といった家族への希望や思いを書くこともできますが、このような内容には通常、遺言事項としての法的な強制力はありません。
このような家族への思いなどを記載する部分を「付言事項」といいます。
法的な効力がなくても、なぜこのような遺言を残したのかを家族に伝えるという意味では、とても大切な部分になることがあります。
大切なのは「何を書きたいのか」を整理すること
遺言書を作ろうと思ったとき、最初から法律的な文章を考える必要はありません。
まずは、
誰に、何を残したいのか。
自分が亡くなった後、どのようにしてほしいのか。
家族に何を伝えておきたいのか。
を整理してみることが大切です。
その中から、法律上の効力を持たせるべき内容と、付言事項として思いを伝える内容を分けていきます。
遺言書は単に財産の分け方を決める書類ではありません。
ご自身の財産を整理し、これから先のことを考え、残される方へ意思を伝えるためのものでもあります。
ハートフルサポート行政書士事務所では、ご本人のお気持ちをお伺いしながら、遺言書にどのような内容を盛り込むのがよいのか、一緒に整理いたします。
「まだ遺言書を作ると決めたわけではないけれど、自分の場合は何を書いておけばよいのだろう」
そのような段階からでも、お気軽にご相談ください。

