予備的遺言とは?財産を残したい人が先に亡くなった場合に備える遺言

遺言書を作成するとき、多くの方は、

「自分が亡くなったときに、誰に財産を残したいか」

を考えます。

では、もう一つ考えてみてください。

財産を残す予定だった人が、自分より先に亡くなったらどうなるでしょうか?

あまり考えたくないことではあります。

しかし、遺言書は作成してから実際に効力が生じるまで、10年、20年という年月が経つこともあります。

その間に家族の状況が変わることは十分に考えられます。

そのような「もしも」に備えるのが、予備的遺言です。

予備的遺言とは?

予備的遺言は、「補充遺言」などと呼ばれることもあります。

簡単にいうと、

「財産を渡す予定だった人が自分より先に亡くなっていた場合には、代わりにこの人へ渡します」

という内容を、あらかじめ遺言書に入れておくものです。

たとえば、

「自宅は妻に相続させる」

という遺言を作成するとします。

そのときに、

「もし妻が私より先に亡くなっていた場合には、自宅は長女に相続させる」

という内容もあわせて定めておきます。

これが予備的遺言です。

財産を渡す予定だった人が先に亡くなったら?

遺言によって財産を受け取る予定だった人が、遺言者より先に亡くなることがあります。

この場合、原則として、その人に財産を取得させることを定めた遺言部分は効力を生じません。

ここで注意したいのが、

「その人の子どもが当然代わりに財産を受け取れる」とは限らない

ということです。

相続には「代襲相続」という制度がありますが、遺言で指定された財産について、指定された人が先に亡くなったからといって、その子が当然に同じ財産を受け取れるとは限りません。

遺言書の内容全体や相続関係によっては、遺言者が考えていたのとは違う結果になる可能性があります。

こんなケースを考えてみましょう

夫が次のような遺言を作ったとします。

「自宅不動産を妻に相続させる」

ところが、その後、妻が夫より先に亡くなりました。

夫は、

「妻がいなければ、自宅は長女に渡したい」

と思っていたとします。

しかし、その意思を遺言書に残していなければ、当然に「妻の代わりに長女が自宅を取得する」ということにはなりません。

そこで、最初から、

「妻が私より先に死亡していた場合には、自宅不動産を長女に相続させる」

という第二の指定をしておきます。

これによって、「もしも」の場合にも遺言者の意思を残すことができます。

遺言を書き直せばいいのでは?

もちろん、家族の状況が変わったときに遺言書を書き直すこともできます。

遺言書は、一度作ったら変更できないものではありません。

元気なうちであれば、新しい遺言書を作成することができます。

しかし、遺言を作成してから長い年月が経っていると、

「認知症が進んでしまった」

「意思をうまく伝えることが難しくなった」

など、新たな遺言書を作成できるだけの遺言能力が問題になる場合もあります。

だからこそ、最初の遺言書を作る段階で、ある程度「もしも」を想定しておくことには意味があります。

相続人ではない人への遺贈にも使えます

予備的遺言は、配偶者や子どもなどの推定相続人だけのものではありません。

たとえば、

「長年お世話をしてくれたAさんに500万円を遺贈する」

という遺言を作る場合にも、

「Aさんが私より先に死亡していた場合には、Bさんに500万円を遺贈する」

と定めておくことができます。

また、

「受け取る予定だった人が先に亡くなっていたら、特定の団体へ寄付したい」

という意思を遺言書に残すことも考えられます。

子どものいないご夫婦にも検討してほしい予備的遺言

特に考えていただきたいのが、子どものいないご夫婦です。

たとえば夫婦がお互いに、

「自分が先に亡くなったら、すべての財産を配偶者に残したい」

と考えている場合です。

では、

配偶者が自分より先に亡くなっていたら、その財産を誰に渡したいでしょうか?

兄弟姉妹でしょうか。

甥や姪でしょうか。

お世話になった人でしょうか。

あるいは、応援している団体へ寄付したいでしょうか。

ここまで考えて遺言を作っておけば、どちらが先に亡くなった場合にも、ご自身の意思をより反映させることができます。

同時に亡くなった場合についても考えておく

事故や災害などによって、夫婦や家族が同時に亡くなる可能性もゼロではありません。

法律上、複数の人が亡くなり、どちらが先に死亡したのか分からない場合には、同時に死亡したものと推定されることがあります。

そのような場合も考えて、

「遺言者より先に、または遺言者と同時に死亡していた場合」

など、具体的な条件を遺言に定めることがあります。

どのような文言が適切なのかは、家族関係や遺言内容によって検討する必要があります。

予備的遺言のイメージ

たとえば、次のような考え方です。

第一希望

「自宅は妻に相続させたい」

もし妻が先に亡くなっていたら

「自宅は長女に相続させたい」

あるいは、

第一希望

「Aさんに500万円を遺贈したい」

もしAさんが先に亡くなっていたら

「その500万円はBさんに遺贈したい」

このように、第一の指定が実現できない場合の第二の指定をあらかじめ考えておきます。

「もしも」を考えることも遺言書作成の大切な準備です

遺言書を作成するとき、

「自分より子どもが先に亡くなるなんて考えたくない」

「夫や妻が先に亡くなることなんて考えたくない」

と思うのは当然のことです。

しかし、遺言書は、将来のために作るものです。

何年後、何十年後に効力が生じるかは誰にも分かりません。

だからこそ、

「もし、この人が自分より先に亡くなっていたら、どうしたいだろう」

と一度だけ考えてみることも大切です。

ハートフルサポート行政書士事務所では、単に遺言書の文章を作るだけではなく、ご家族や財産の状況を確認しながら、

「この場合はどうしますか?」

「もしこの方が先に亡くなっていたら、誰に残しますか?」

といった将来の可能性も一緒に考えながら、遺言書作成をお手伝いします。

せっかく作る遺言です。

今の希望だけではなく、「もしも」の場合にもご自身の思いが残る遺言を考えてみましょう。

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