自筆証書遺言が無効になるのはどんなとき?書き方と注意点をわかりやすく解説

「自分で遺言書を書いておこう」

自筆証書遺言は、公証役場へ行かなくても自分で作成できる遺言です。

費用を抑えて作成できるというメリットがある一方、法律で定められた方式を守らなければ、せっかく作った遺言が無効になってしまうことがあります。

今回は、自筆証書遺言を作成するときに注意したいポイントをご紹介します。

家庭裁判所の「検認」は、遺言が有効か無効かを判断する手続きではありません

自宅などで保管されていた自筆証書遺言が見つかった場合には、原則として家庭裁判所で**「検認」**を受ける必要があります。

ここで注意したいのが、

検認を受けたからといって、その遺言が「有効」と認められたわけではない

ということです。

検認は、相続人に遺言の存在や内容を知らせるとともに、検認時点における遺言書の状態や内容を明確にし、その後の偽造・変造を防ぐための手続きです。

遺言そのものが法律上有効なのか、無効なのかを判断する手続きではありません。

法務局で保管してもらえば「有効」ということ?

自筆証書遺言については、法務局の**「自筆証書遺言書保管制度」**を利用することもできます。

法務局では、遺言書が法律で定められた方式に適合しているかについて外形的な確認が行われます。

しかし、法務局に保管されたからといって、

遺言内容の有効性まで保証されるわけではありません。

たとえば、遺言を作成した当時に遺言者に遺言能力があったのか、といった問題まで法務局が判断する制度ではありません。

自筆証書遺言の基本的な要件

自筆証書遺言を作成するときには、まず次の基本的なルールを確認しましょう。

① 遺言書の本文は本人が自筆する

自筆証書遺言は、その名前のとおり、原則として遺言者本人が自分で書く遺言です。

パソコンで本文を作成したり、他人に代筆してもらったりすることはできません。

また、手が不自由だからといって、他人が遺言者の手を動かして文字を書くような方法では、自筆性について問題になる可能性があります。

自分で文字を書くことが難しい場合には、公正証書遺言を検討する方法があります。

② 財産目録はパソコンで作成することもできます

現在は、自筆証書遺言に添付する財産目録については、自筆でなくても構いません。

たとえば、

  • パソコンで財産目録を作成する
  • 不動産の登記事項証明書を添付する
  • 預金通帳のコピーを添付する

といった方法も認められています。

ただし、自筆ではない財産目録を添付する場合には、その各ページに遺言者本人が署名・押印する必要があります。

両面に記載がある場合には、両面に署名・押印が必要です。

③ 日付をきちんと書く

遺言書には、作成した日付を記載する必要があります。

たとえば、

「令和8年8月18日」

「2026年8月18日」

など、作成日を特定できるように記載します。

「令和8年8月吉日」

というような記載では、具体的な日を特定することができません。

遺言書では日付が非常に重要ですので、年月日を明確に記載しましょう。

④ 氏名を書いて押印する

自筆証書遺言には、遺言者本人の署名と押印が必要です。

押印については実印でなければならないという決まりはありません。

ただし、遺言はご自身が亡くなった後に効力が生じる大切な書類です。

本人が作成したものなのかという疑いをできるだけ残さないようにすることも大切です。

⑤ 訂正するときにも決められた方法があります

自筆証書遺言を書いていて、間違いに気付くこともあります。

遺言書の加除・変更については、民法に定められた方法があります。

訂正方法に問題があると、その変更部分について効力が認められないなど、後になって問題になる可能性があります。

書き間違いが多くなった場合には、無理に訂正を重ねるより、最初から書き直した方が分かりやすく安全な場合もあります。

⑥ 夫婦で一緒に一通の遺言書を作ることはできません

「夫婦で同じ内容の遺言を残したい」

ということもあるでしょう。

しかし、民法では共同遺言は禁止されています。

夫婦で同じような内容の遺言を作る場合でも、夫は夫の遺言書、妻は妻の遺言書として、それぞれ別々に作成する必要があります。

鉛筆や消えるペンは避けましょう

遺言書は長期間保管される可能性があります。

鉛筆や消せるボールペンなど、後から容易に消したり変更したりできる筆記具は、改ざんなどをめぐるトラブルの原因になります。

法律上の有効・無効だけを考えるのではなく、後から疑義が生じない遺言書を作るという観点から、消えにくい筆記具を使用することをおすすめします。

法務局に預ける場合には用紙にも決まりがあります

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合には、法務局が定める様式上の注意事項があります。

用紙はA4サイズを使用し、一定の余白を設けるなどのルールがあります。

また、遺言書を封筒に入れて封をした状態で提出するのではなく、封をしていない遺言書を法務局へ持参します。

法務局での保管を希望する場合には、作成前に最新の様式や注意事項を確認しておきましょう。

自宅で保管していた遺言書を見つけたら?

亡くなった方の自宅から封印された遺言書が見つかっても、勝手に開封しないようにしましょう。

封印のある遺言書は、原則として家庭裁判所で相続人等の立会いのもと開封することとされています。

これに反して家庭裁判所以外で開封した場合には、5万円以下の過料に処せられる可能性があります。

なお、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管されていた遺言書については、家庭裁判所での検認は必要ありません。

方式が整っていても「必ず有効」とは限りません

ここも大切なところです。

自筆証書遺言について、

「自筆で書いた」

「日付もある」

「署名・押印もした」

からといって、必ずすべての問題がなくなるわけではありません。

たとえば、

  • 遺言を作成した当時の遺言能力が問題になる
  • 財産や受け取る人を特定できない
  • 遺言内容の解釈をめぐって争いになる

といったことも考えられます。

形式だけではなく、亡くなった後に実際にその内容を実現できる遺言を作ることが大切です。

「自分で書くか、公正証書にするか」で迷ったら

自筆証書遺言には、

「自分で作成できる」

「費用を抑えられる」

という大きなメリットがあります。

一方で、自分自身で方式や内容を確認しなければならないという難しさもあります。

財産関係や家族関係が比較的シンプルな場合には、自筆証書遺言が適していることもあります。

反対に、

「相続人同士でもめる可能性がある」

「相続人以外の人にも財産を残したい」

「自分の意思をできるだけ確実に実現してほしい」

という場合には、公正証書遺言を検討する方法もあります。

ハートフルサポート行政書士事務所では、ご家族や財産の状況、ご本人のお気持ちをお伺いしながら、遺言書作成のお手伝いをしています。

遺言書は「書くこと」が目的ではなく、ご自身の意思を将来きちんと実現することが大切です。

どの方法がよいのか分からない場合も、まずは一緒に整理するところから始めてみましょう。

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