相続の種類
相続にはどのようなものがあるのでしょうか。
まずは、相続の種類についてみていきましょう。
相続は、遺言書があるのか、遺言書がないのかの確認から始まります。
遺言書の有無は、相続においてとても大きな問題となります。
遺言書の有無で、相続内容(誰がいくら何を相続するのか)などが大きく変わってくるからです。
① 遺言書がある場合:原則「遺言による相続」
② 遺言書がない場合:原則「法定相続」
それでは、それぞれの違いについてみていきましょう。
遺言による相続について
まず、注意事項です。
遺言書が自筆証書遺言である場合は、見つけた人等が勝手に開封することはできません。
家庭裁判所において「検認」の手続きを踏まなければなりませんので、注意しましょう。
家庭裁判所の検認の手続きについては、こちらの記事をお読みください。
なお、自筆証書遺言でも法務局の遺言書管理所に預けてある場合は、検認は不要です。
それでは、改めて見ていきましょう。
遺言書がある場合は、原則、遺言で指定された人が指定された財産を引き継ぐことになります。
遺言執行者(遺言の内容を実現するために選ばれた人)が指定されている場合は
その執行者を通して
遺言執行者指定されていない場合は、相続人それぞれが遺言書を使って
不動産の登記名義の変更や、預貯金の払い戻し・名義の書き変え等を行います。
ここで、注意事項があります。
「遺留分(いりゅうぶん)」という言葉を聞いたことがありますか。
「遺留分」は相続において、相続する人にとっても相続される人にとっても重要な事項であるため
絶対に知っておかなければなりません。
「遺留分」とは遺言であっても奪うことができない相続財産における割合のことです。
この権利は相続人全員が持っている権利ではありませんが
遺留分の権利をもつ相続人がいるときは、遺留分を侵さない配慮が必要になります。
遺言の内容が遺留分を侵害しており
それに対し遺留分侵害請求を行使されたときは、遺言通りの相続が実現しないことがあります。
つまり、遺言よりも強いのが遺留分です。
自分の遺留分が侵されたとする相続人は、
- 相続開始及び遺留分を侵害されたことを知った時から1年以内
- 相続開始から10年以内
であれば、遺留分を主張することができます。
したがって遺言を遺す場合は、遺留分に対する配慮が必要です。
「私が築いた財産だから誰にいくらあげようが私の勝手でしょう」という考えを押し通すことが
できないのが「遺留分」です。
法律で決められた割合を主張できる権利(もらう権利)のある人が存在しているということです。
遺留分のない遺言は、相続人間の争いの火種になる可能性があることも覚えておきましょう。
また、法定相続人全員の同意があれば、遺言書と異なる内容の相続を行うことも可能です。
法定相続について
遺言書がない場合は、法定相続人により相続財産を分ける遺産分割の手続きが行われることになります。
遺言がありませんので、原則、「法定分割(法律で決められている割合により遺産を分割する)」となります。
法定分割については、こちらの記事をご確認下さい。
親の介護をしたので母の財産は私が一番多くもらうべきだという考え方で
遺産を分けることができないということです。あくまでも法律で定められた割合が原則となります。
遺産分割の流れ
① 「遺産分割協議」を行います。
相続人全員で誰がどの財産をどのような割合で取得するかの話合いを行うことです。
② 遺産分割協議がまとまらない時は、裁判所の調停・審判を経て、法律が定める割合を基準に遺産分割が行われます。
③ 遺産分割により財産を取得した人は、
遺産分割協議書(①)、調停証書・審判書(②)を使い、
不動産登記の移転登記手続きや預貯金の払い戻し等を行います。
遺産分割協議には、相続人全員が参加する必要があります。
相続人全員の同意があれば、どの財産をどの割合で取得するのかを自由に決めることができます。
しかし、現実はそれほど簡単でないことは明らかでしょう。
相続人全員の同意が必要ですので、決着がつくまで数年かかることもよくあることです。
このように遺産分割協議で決まった結果を「遺産分割協議書」にまとめることになります。
また、遺産分割に期限はありません。
ただし、遺産分割が成立するまでは
遺産を共有することになり勝手に処分をしたりすることはできません。
遺産分割協議は、相続人それぞれに思いがあるため、それほど簡単にまとまるものではありません。
全員の同意が必要となりますので、力づくに推し進めることはよくありません。
相続人のうち一人でも、裁判所に申立てれば「法定分割」となります。
円満な相続を考える方は、遺言書を準備しましょう。