遺言執行者
遺言書の実現を確実にするために、遺言執行者の指定は重要事項です。
遺言の内容を実現するためには、家庭裁判所の「検認」手続きを終えた後
相続人自身が行動を起こすことが必要です。
ただし、遺言の内容によっては、相続人全員の実印や印鑑証明書が必要になることがあります。
全ての相続人が遺言の内容に納得し、快く対応してくれたらいいのですが
そうでないことも多々あります。
特に相続人が多くなればなるほど、非協力的な人が数人か出てきてしまうものです。
相続人の誰かが行方不明ということもあります。
行方不明者がいる場合は、その人を抜きで遺言執行をできるかといえば
そうではありません。
行方不明者のために家庭裁判所で財産管理人を選任してもらわなければ
手続きを進めることができません。
そこで、民法では遺言書の内容をスムーズに実現するために遺言執行者の指定についての定めがあります。
民法1006条1(遺言執行者の指定)
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
遺言執行者は、遺言者の代理人とみなされますので
遺言内容の実現に必要な一切の行為をする権利と義務を有することになります。
遺言執行者がいれば、相続人全員での手続きは不要となります。
遺言執行者になれる人はどのような人でしょうか。
遺言執行者は、未成年者や破産者を除けば誰でもなることができます。
また、民法にもあるように一人ではなく複数人を指定することも可能です。
長男や妻が遺言執行者になる場合が多いのですが、
遺言が長男や妻に有利な内容になっているのではないか等、他の相続人が詮索することもあり
そのため、別の紛争を招くこともあります。
このような紛争を避けるためにも利害関係のない第三者に依頼することも一つの方法です。
また、遺言の中で、認知や推定相続人の廃除をする場合は、必ず遺言執行者が必要です。
この場合は専門家に相談しながら、遺言執行者を指定するのが良いでしょう。
遺言執行時に遺言執行者が亡くなっているということがあれば
再び家庭裁判所に遺言執行者の選任をしてもらわなければいけません。
このような事態に備え
遺言執行者を指定する場合は2名指定しておき
1名が欠けたときはもう一人が対応できるようにしておくと安心です。
遺言執行者に支払う報酬についても遺言の中で明示しておくといいでしょう。