寄与分について
自分名義の財産を把握する際は「寄与分」についても考える必要があります。
「寄与」の辞書的な意味は「ある事物や人のために自らの力をできる限り使い、力になること」
つまり「貢献」を指します。
相続における寄与分というのは、
自分名義の財産の中に誰かの寄与(貢献)によって得られたものがないかということです。
例えば、裸一貫でパン工場を始めたが、当初より妻が一緒に働いてくれていた。
パン工場は夫名義であるが、大きな工場になったのは、妻の寄与があったからだと考えます。
したがって、パン工場が夫の名義だからと言って、相続時、
そっくりそのまま推定相続人に遺産分割されるのは問題ではないかということです。
半分は妻の貢献により、パン工場が存在しているのであれば
遺言で妻の貢献分(寄与分)を明示することにより、遺産分割されることを防ぐことができます。
相続の対象となる遺産と見えたものに本当は遺産ではないものが混じっていたと考えることになり
実情に合った適切な範囲を示すことになります。
相続分として、妻に多く遺産を渡すという考えとは少し異なります。
妻の努力があって夫名義の財産が残ったのであるから
半分は初めから妻のもの(寄与分)であり
残り半分が夫のもの(遺産)を相続の対象とするということです。
民法には寄与分についての定めがあります。
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価値から共同相続人で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなす。
民法904 2-1
寄与分は、相続人同士の協議で決めることができますが
協議で決まらない場合や協議が困難な場合は家庭裁判所で決めてもらうこともできます。
また、寄与者自らが家庭裁判所へ請求することもできます。
寄与分は、相続人のみに認められています。
例えば、一緒に事業を起こした幼馴染の中村さんや療養看護に尽力した内縁の妻といった方々は
相続人には当たらず、寄与分は認められません。
このような人たちには、前もって贈与や遺贈により財産分けをしておく必要があります。